OpenAI DaybreakとClaude Securityとは?AIで脆弱性を見つけて直す時代へ【2026】Codex Security・Claude Mythos・Claude Codeのセキュリティレビューを比較
2026年、AI企業が相次いで「AIでソフトウェアの脆弱性(セキュリティの穴)を見つけ、修正まで手伝う」取り組みを打ち出しました。OpenAIはDaybreak(デイブレイク)、AnthropicはClaude Securityと、非公開の強力なモデルClaude MythosによるProject Glasswingです。この記事では、それぞれ何ができるのか、誰が使えるのか、どう違うのかを、非エンジニアの方にも分かるように整理します。
- どちらも「コードを読んで脅威を整理 → 脆弱性を探す → 本当に悪用できるか確かめる → 修正案を出す」をAIエージェントで回す仕組み。最後は人がレビューして適用する
- OpenAI Daybreak(2026年5月発表)は、Codex Securityを土台に、モデル・パートナー企業と組み合わせた企業向けの取り組み。強力なモデルは審査済みの防御側だけが使える
- Anthropicは、限定パートナー向けのClaude Mythos/Project Glasswing(2026年4月)と、組織向けのClaude Security、開発者向けのClaude Codeのセキュリティレビューの3段構え
- 個人・中小の開発者がすぐ試せるのはClaude Codeの
/security-reviewやセキュリティプラグイン。大規模な継続診断は各社の企業向けサービスの領域
なぜ今「AIで脆弱性を探す」のか
背景にあるのは、攻撃側がすでにAIを使っているという現実です。Anthropicが2026年9月に公表した脅威レポートでは、攻撃グループがAIに脆弱性の調査から攻撃コードの作成・テストまでを自動で回させていた事例が報告されています。修正パッチの差分から短時間で攻撃コードを作れるという指摘もあり、「脆弱性が公表されてから直すまで」の猶予はどんどん短くなっています。
国内でも2026年秋には、Webシステムの脆弱性やAPIの不正利用で大量の情報が流出した事例が相次ぎました(→最近のサイバー攻撃事例まとめ)。人手のコードレビューや年1回の診断だけでは、AIで加速した攻撃に追いつけない——そこで守る側もAIで先回りして穴を見つける流れが生まれています。


AI脆弱性診断の仕組み(共通の流れ)
DaybreakもClaude Securityも細部は違いますが、AIエージェントが行う作業の流れはおおむね共通しています。
従来の自動診断ツールは「決まったパターンに当てはまるか」を機械的に調べるものが中心でした。AIはコードの意味や、システム全体のつながりを読んだうえで判断できるため、「ログインはしているが、他人のデータまで見えてしまう」といった設計レベルの穴も見つけやすいのが特徴です。こうした穴の具体例はサイバー攻撃の仕組みと対策「APIの不正利用」で解説しています。
OpenAI Daybreakとは
Daybreakは、OpenAIが2026年5月11日に発表したサイバーセキュリティの取り組みです。単一の製品やモデルではなく、OpenAIのモデル+AIエージェント「Codex Security」+セキュリティ企業のパートナーを組み合わせ、ソフトウェアの開発初期から守りを組み込むことを目指しています。
主な機能
- 安全なコードレビューと脅威モデリング(リポジトリ全体の脅威モデルを作り、人が編集できる)
- 悪用できるかの検証:隔離した環境(サンドボックス)で脆弱性を試し、本当に危ないものを優先する
- 修正案の作成とパッチの検証:修正案は人のレビューを経てから反映
- 依存パッケージ(サプライチェーン)のリスク分析、検知と対応の手引き、監査に使える記録の出力
中核になっているCodex Securityは、OpenAIが2026年3月に公開したアプリケーションセキュリティ用のAIエージェントです。開発者向けAI「Codex」をセキュリティの仕事に特化させたものと考えると分かりやすいでしょう。
使えるモデルと利用条件
Daybreakでは、用途に応じて段階的にモデルが提供されます。
| モデル・区分 | 内容 |
|---|---|
| GPT-5.5 | 一般に提供されているモデル |
| GPT-5.5(Trusted Access for Cyber) | 審査を通った防御側の専門家向けに、正当なセキュリティ作業で断られにくくしたもの |
| GPT-5.5-Cyber | 侵入テストやレッドチーム(攻撃者役での検証)など、より踏み込んだ作業向けの専用モデル |
2026年8月には提供範囲が広がり、報道によると防御作業向けの「Daybreak Blue」と、別途承認が必要な高度な研究向けの「Daybreak Red」という区分が設けられました。また個人で利用する場合は、ハードウェアのセキュリティキー(FIDO2)でログインする「Advanced Account Security」への登録が必須とされ、既存の個人利用者も2026年10月1日までに対応が求められました。強力なモデルのアカウントが乗っ取られて悪用されるのを防ぐためです。
パートナーには、Cloudflare、Cisco、CrowdStrike、Oracle、Zscalerなどの大手セキュリティ・IT企業が名を連ねています。企業は公式サイトや営業窓口からセキュリティ評価を依頼する形で、料金は執筆時点で公開されていません。
出典:OpenAI「Daybreak: Tools for securing every organization in the world」、CIO Dive(2026年5月12日)、CNBC(2026年8月10日)、Yubico(2026年9月29日)
OpenAIのモデルの変遷はOpenAIのモデルの歴史でまとめています。
Anthropic(Claude)側の取り組み
Anthropicの取り組みは、対象者の広さで3つの層に分かれています。
① Claude Mythos/Project Glasswing(限定パートナー向け)
2026年4月7日、Anthropicは新モデルClaude Mythos Previewと、それを使ったProject Glasswingを発表しました。Mythosは、主要なOSやWebブラウザから数千件規模の深刻な未知の脆弱性を見つけたとされ、例としてOpenBSDで27年間見つかっていなかった不具合や、動画処理ソフトFFmpegの16年前からの欠陥などが挙げられています(いずれもAnthropicの発表に基づく内容です)。
能力が高すぎて悪用の危険もあることから、Mythosは一般公開されていません。AWS、Apple、Google、Microsoft、NVIDIA、Cisco、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Linux Foundationなどの事前承認されたパートナーが、防御目的に限って利用しています。Anthropicはオープンソースのセキュリティ団体などへ、総額1億ドル超の利用クレジットや寄付も提供したと報じられています。
② Claude Security(組織向け)
Claude Securityは、組織のコードを継続的に診断するサービスです。2026年4月に公開ベータとして始まり、Anthropicによると、それ以降数千の組織が100万件を超える脆弱性を発見したとされています(同社の発表値)。2026年10月21日には、Claude Enterprise向けに大きな更新が行われました。
- 継続スキャン:最初に全体を深く診断し、その後はコードの変更に合わせて、リスクに応じて再診断する
- 修正の自動追跡:修正が入ると「対応済み」にし、同じ問題が再発したら再びオープンにする
- プロジェクトごとの脅威モデル:コードから自動生成され、人が編集でき、深刻度の判定に使われる
- API・Webhook・MCPコネクタ:新しい発見をSlackやJiraに通知したり、Claude.aiやClaude Codeから参照したりできる
- 1プロジェクトにつき最大8つのリポジトリを接続でき、Mythosを使った診断もClaude.ai上のClaude Securityアプリで利用できる
利用にはClaude Enterpriseプラン、利用者ごとのプレミアムシート、利用クレジットが必要で、料金はトークン(AIの処理量)に応じた実費で、プラットフォーム利用料はかからないとされています。2026年12月31日までは、対象組織に月最大2万5,000ドル分のクレジットを2か月提供するキャンペーンも行われています。
③ Claude Codeのセキュリティレビュー(開発者向け)
開発者がもっとも手軽に使えるのが、Claude Codeに組み込まれたセキュリティ機能です。Claude Codeには以前から、作業中の変更を脆弱性の観点で点検する/security-reviewコマンドや、プルリクエストを自動で点検するGitHub Actionsが用意されています。さらに2026年夏からは、Claude Security用のプラグインがベータ版としてClaude Codeの利用者全般に提供されています。プラグインは複数のAIエージェントで、①コードの構造を把握 → ②脅威を洗い出し → ③誤検知を減らすために検証 → ④既存の書き方に合わせた修正案を提示、という流れで動きます。
出典:Unite.AI「Anthropic Adds Continuous Scanning and Fix Tracking to Claude Security」、Cloud Security Alliance「AI Vulnerability Discovery and Containment: Claude Mythos」、Cyber Security News
Claudeのモデルの変遷はClaudeのモデルの歴史、各社のモデルの違いはChatGPT・Claude・Geminiモデル比較をどうぞ。
DaybreakとClaude Securityの比較表
| 項目 | OpenAI Daybreak | Anthropic(Claude Security ほか) |
|---|---|---|
| 発表 | 2026年5月11日(8月に提供範囲を拡大) | Mythos/Glasswing:2026年4月7日 Claude Security:2026年4月ベータ、10月21日に大型更新 |
| 中核のAI | Codex Security+GPT-5.5系(GPT-5.5-Cyberなど) | Claudeの各モデル(Mythosを含む) |
| 主な機能 | 脅威モデリング、サンドボックスでの検証、修正案とパッチ検証、依存関係のリスク分析、監査向けの記録 | 脅威モデル、継続スキャン、修正の自動追跡、修正案、API・Webhook・MCP連携 |
| 使える人 | 企業は評価を依頼。強力なモデルは審査済みの防御側(個人はハードウェアキー必須) | Mythos:限定パートナーのみ Claude Security:Claude Enterprise プラグイン・ /security-review:Claude Codeの利用者 |
| 料金 | 非公開(執筆時点) | Claude Security:トークン実費(Enterpriseのシート・クレジットが前提) |
| 修正の適用 | 人のレビュー後に反映 | 人のレビュー・承認が前提 |
大きな違いは「入口の広さ」です。Daybreakは大企業やセキュリティ専門家との協業を軸にした企業向けの取り組みで、Anthropicは限定パートナー(Mythos)から一般の開発者(Claude Code)まで段階的に入口を用意しています。一方で、どちらも「強力な能力ほど利用者を絞る」という考え方は共通しています。
どれを使うべき?立場別の選び方
| 立場 | おすすめの始め方 |
|---|---|
| 個人開発者・小さなチーム | Claude Codeの/security-reviewやセキュリティプラグインで、変更ごとに点検する習慣をつける |
| 自社でWebサービス・アプリを開発する企業 | GitHubのプルリクエストに自動のセキュリティレビューを組み込み、Claude Enterpriseを使っているならClaude Securityの継続スキャンを検討する |
| 大規模なシステムを持つ企業・セキュリティ部門 | DaybreakやClaude Securityの評価・導入相談を行い、既存の診断ツールや監視(実行中のシステムの見張り)と組み合わせる |
| 開発はしていない中小企業 | まずは更新・多要素認証・バックアップ・委託先の確認といった基本対策が先(→対策チェックリスト)。Webサイトを制作会社に任せているなら、こうした診断をしているか確認する |
開発者が今日からできること:Claude Codeでセキュリティレビュー
Claude Codeを使っているなら、次の手順でセキュリティの点検を日常の開発に組み込めます(コマンドや機能の名前は執筆時点のものです)。
- 変更のたびに点検する:作業の区切りでClaude Codeに
/security-reviewと入力し、未コミットの変更に脆弱性がないかを確認する - プルリクエストで自動点検:GitHub Actionsでセキュリティレビューを動かし、プルリクエストごとに指摘をコメントさせる(GitHub連携の基本はClaude Code×GitHubを参照)
- 指摘は人が判断する:指摘が本当に問題か、修正案が正しいかを確認してから取り込む。テストも一緒に実行する
- AIエージェント自体の権限も絞る:点検させるClaude Codeには、本番の認証情報や書き込み権限を渡さない(→AIエージェント本番運用の安全設計)
指摘によく出てくる「SQLインジェクション」「権限チェック漏れ」「鍵の直書き」などの意味は、サイバー攻撃の仕組みと対策でコード例つきで解説しています。用語の意味が分かっていると、AIの指摘を判断しやすくなります。
注意点:AIの指摘は「たたき台」
- 結果は毎回同じとは限らない:AIのスキャンは同じコードでも実行のたびに結果が少し変わることがあり、誤検知も見落としもある
- 修正案は必ず人がレビュー:各社とも、修正案は人が確認・承認してから適用することを前提にしている
- 対象は自分のシステムだけ:自分が所有しているか、テストの許可を得たシステム以外を診断・攻撃するのは法律違反になりうる
- コードを外部に渡すことになる:診断のためにコードがAIサービスに送られる。データの扱い(保持期間・学習への利用の有無)を契約やプランで確認する
- AIツール自体にも脆弱性はある:AIの開発ツールやプラグインにも脆弱性が見つかることがあるため、ツール自体も最新版に保つ
よくある質問
OpenAI Daybreakは誰でも使える?
誰でもすぐ使えるサービスではありません。企業は公式サイトや営業窓口からセキュリティ評価を依頼する形が基本で、より強力なモデルを使うには、検証済みの防御側の専門家向けプログラムへの参加が必要です。個人で参加する場合は、ハードウェアのセキュリティキーによる強いログイン保護(Advanced Account Security)が求められます。条件は変わることがあるため、最新情報は公式ページで確認してください。
Claude Securityを使うにはどのプランが必要?
2026年10月時点で、Claude.ai上のClaude SecurityはClaude Enterpriseプランの組織向けに提供されています(利用者ごとのプレミアムシートと利用クレジットが必要)。一方、Claude Code用のセキュリティプラグインはベータ版としてClaude Codeの利用者全般に提供されており、Claude Codeには以前から/security-reviewコマンドもあります。
AIが見つけた脆弱性や修正案はそのまま信じてよい?
そのまま信じるのは危険です。AIのスキャンは毎回結果が少し変わることがあり、誤検知や見落としもあります。各社とも、修正案は人がレビューして承認してから適用することを前提にしています。AIは「見つける・確かめる・直し方を提案する」作業を速くする道具で、最終判断は人が行います。
他人のサイトをAIで診断してもいい?
いけません。DaybreakもClaude Securityも、自分が所有しているか、テストの許可を得ているシステムだけを対象にすることが前提です。許可なく他人のシステムの脆弱性を探したり攻撃を試したりすると、不正アクセス禁止法などに違反するおそれがあります。
まとめ|守る側もAIで先回りする時代
OpenAIのDaybreakとAnthropicのClaude Security・Mythosは、どちらもAIエージェントが脆弱性を見つけ、確かめ、修正案まで出す仕組みです。強力な能力ほど利用者を絞る点は共通で、個人や小さなチームがすぐ始められるのはClaude Codeのセキュリティレビューです。AIの指摘を正しく判断するためにも、攻撃の仕組みと基本対策をあわせて押さえておきましょう。
次はサイバー攻撃の仕組みと対策で攻撃の中身を、最近のサイバー攻撃事例まとめで実際の被害を確認してみてください。
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