生成AIと著作権の考え方【2026】文化庁の資料でわかる「侵害になる場合・ならない場合」と、AI生成物は自分の著作物になるか・商用利用前のチェックリスト
ChatGPTや画像生成AIで作った文章・画像を、ブログやSNS、仕事の資料、販売物に使ってもよいのか。「AIで作ったものは著作権がない」「学習に使われた作品の侵害になる」など、さまざまな話が出回っています。この記事では、文化庁が公表した「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月)と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月)をもとに、どんなときに侵害になり得るのか、AIで作ったものは自分の著作物になるのか、使う前に何を確認すればよいかを、初心者向けに整理します。
- 文化庁は、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」を分けて考える必要があると整理している。関係する条文が違うため
- AIで作った画像・文章を公開・販売するときは、人が作った場合と同じ基準で判断される。既存の作品との「類似性」と「依拠性」の両方があれば侵害になり得る
- AIで作ったものが自分の著作物になるかは別の問題。ボタンを押しただけのものは著作物に当たらないとされ、人の「創作的寄与」があれば認められる場合がある
- 使う前は①似た作品がないか検索 ②作品名・キャラ名をプロンプトに入れない ③プロンプトを記録 ④利用規約を確認の4つから
文化庁の「AIと著作権に関する考え方」とは
生成AIと著作権の関係を考えるときの土台になるのが、文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会がまとめ、令和6年(2024年)3月15日に公表された「AIと著作権に関する考え方について」です。法学研究者・弁護士・裁判官などで構成される国の審議会が、今の著作権法がAIにどう当てはまるかを整理したものです。
まとめられた理由について、文化庁の概要資料は「AIと著作権の関係を直接的に取り扱った判例や裁判例が未だ乏しい」ため、判例の積み重ねを待たずに懸念に応える必要があったと説明しています。さらに令和6年7月31日には、開発者・サービス提供者・利用者・権利者ごとに「何に気をつけるか」をまとめた「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表されました。
押さえておきたい前提:文化庁自身が、この「考え方」は法的な拘束力を持つものではなく、特定の生成AIについて確定的な法的評価をするものでもないと明記しています。最終的な判断は、個別の事案ごとに裁判所が行います。この記事も「国の審議会が示した解釈の目安」として読んでください。


3つの観点:学習・生成と利用・AI生成物の著作物性
「生成AIと著作権」の話がややこしく感じるのは、違う問題が1つの話として語られがちだからです。文化庁は次の3つを分けて考えるよう整理しています。
| 観点 | どんな行為か | 主な考え方 |
|---|---|---|
| ① AI開発・学習段階 | 作品を学習用データとして集めて複製し、AIを開発する | 著作権法第30条の4により、原則として許諾なく可能。ただし例外あり |
| ② 生成・利用段階 | AIで画像などを生成し、SNSに上げる・販売する | 通常の著作権侵害と同じ基準(類似性と依拠性)で判断 |
| ③ AI生成物の著作物性 | AIで作ったものが「著作物」として守られるか | 人がAIを「道具」として使ったといえるか(創作意図と創作的寄与)で判断 |
AIを使う側(ブログやSNS、仕事で生成物を使う人)にとって特に大事なのは②と③です。①は主にAIを開発する事業者の話ですが、仕組みを知っておくと②の「依拠性」の話が理解しやすくなります。生成AIがどう学習して文章や画像を作っているかは、生成AIの仕組みで解説しています。
AI開発・学習段階:著作権法第30条の4
AIの学習のように、作品に表現された思想や感情を「享受」(読む・見る・聴くなどして楽しむ)することを目的としない利用は、著作権法第30条の4により、原則として著作権者の許諾なく行えるとされています。文化庁の概要資料は、著作権者が得ている経済的利益は通常「作品を楽しむことの対価」であり、楽しむことを目的としない利用なら通常その利益を害さない、という理由を説明しています。
例外①「享受」の目的が混ざっている場合
主な目的が学習でも、作品を楽しむ目的が同時にある場合は第30条の4が適用されません。文化庁は次のような例を挙げています。
- 意図的な「過学習」など、学習元の作品と創作的表現が共通したものを出力させる目的の追加学習(ファインチューニング)のためのデータ収集
- 特定のクリエイターの少数の作品群から、共通する創作的表現を出力させる目的で行う追加学習のための複製
- 一部のRAG(検索拡張生成)のうち、既存の作品の創作的表現をAIで出力させることを目的としたもののためのデータ収集(ただし第47条の5の要件を満たす範囲で許諾なく可能になる場合があるとされています)
なお、「作風」がアイデアにとどまるなら、作風が共通するだけでは著作権侵害にはならないとされています。著作権法が守るのは「創作的表現」で、「アイデア」は守らないためです。
例外②「著作権者の利益を不当に害する」場合
第30条の4にはただし書きがあり、著作権者の利益を不当に害する場合は適用されません。文化庁は、AI学習用に有償で提供されているデータベースを、お金を払わずに複製することなどを例に挙げています。また、robots.txtやID・パスワードでAI学習用のクローラーのアクセスを制限しているサイトについて、その措置を回避して収集する行為がただし書きに当たる場合があると整理しています。
さらに、海賊版と知りながらそのサイトから学習データを集めることは「厳にこれを慎むべき」とされ、そうした事業者は、開発したAIによる侵害の責任を問われる可能性が高まるとされています。
生成・利用段階:侵害になるのは「類似性」と「依拠性」がそろったとき
AIで作った画像や文章をSNSに上げたり、販売したりするときは、人が描いた・書いた場合と同じ基準で侵害かどうかが判断されます。ポイントは次の2つです。
- 類似性:既存の作品と創作的表現が共通していること(アイデアや作風が似ているだけでは足りない)
- 依拠性:既存の作品をもとにして作ったこと
この2つが両方認められ、私的使用などの例外(権利制限規定)にも当たらない場合に、既存の作品の著作権侵害になります。逆に、どちらかがなければ侵害にはならないとされています。
AIの場合の「依拠性」は少し特殊
人が描く場合、依拠性は「その作品を知っていたか」がポイントになります。AIの場合について、文化庁は次のように整理しています。
- 学習データに含まれていた場合:利用者がその作品を知らなくても、通常、依拠性があったと推認される。ただし、そのAIが学習した作品の創作的表現を出力しない状態になっていることを利用者が主張・立証すれば、依拠性がないと判断される場合もあり得る
- 学習データに含まれているか不明な場合でも、権利者が「利用者がその作品にアクセスできた」「生成物が高度に似ている」ことなどを立証すれば、依拠性ありと推認され得る
- プロンプトに既存の作品そのもの、または作品のタイトル・キャラクター名などの固有名詞を入力した場合は、利用者がその作品を知っていたことを推認させる事情となり、依拠性が認められやすくなる(チェックリスト&ガイダンス)


「生成」と「利用」は別に判断される
個人が私的に楽しむために生成する(著作権法第30条第1項)、社内で許諾を得る前提で検討のために生成する(同第30条の3)といった場合は、その範囲内なら許諾なく適法に生成できます。しかしチェックリストは、生成物をインターネットで配信したり、複製して配ったりする「利用」は、権利制限規定の範囲外になる場合が多いとしています。つまり、作るのはよくても、公開・販売するときにあらためて確認が必要です。
侵害になったらどうなる?
文化庁の概要資料では、権利者は侵害した人に対して、新たな生成の差止め、すでに生成したものの配信などの差止め、生成物の廃棄を求められると整理されています。また、一定の場合には、AI開発事業者やAIサービス提供事業者も侵害の責任を問われる可能性があるとされています。
AIで作ったものは自分の著作物になる?
「AIで作った画像を他人に勝手に使われたら、やめてと言えるのか」という問題です。著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義しています(第2条第1項第1号)。文化庁の考え方は次のとおりです。
- 人が何も指示しない、または簡単な指示をして「生成」ボタンを押しただけのものは、著作物に当たらないと考えられる
- 人が思想や感情を表現するための「道具」としてAIを使ったと認められれば著作物に当たり、AI利用者が著作者になると考えられる
- 「道具」として使ったかどうかは、創作意図があるか、創作的寄与と認められる行為をしたかで判断される
- AI自体は著作者になれない(著作者になれるのは人=自然人か法人だけ)
「創作的寄与」の判断材料
| 要素 | 文化庁の考え方(概要資料より) |
|---|---|
| 指示・入力の分量や内容 | 創作的表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。長いプロンプトでも、アイデアを示すだけなら判断に影響しない |
| 生成の試行回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。生成物を確認して指示を修正しながら試行を繰り返す場合は、著作物性が認められる場合もある |
| 複数の生成物からの選択 | 単に選ぶだけでは影響しない(ただし、選択を要素に含む創作行為との関係も考慮が必要) |
| 人による加筆・修正 | 創作的表現といえる加筆・修正をした部分は、通常、その部分に著作物性が認められる |
大切なのは、「AI生成物だから一律に著作物になる/ならない」とは決まらないことと、著作物になるかどうかと、他人の作品の侵害になるかどうかは別の問題だということです。自分の著作物と認められる場合でも、既存の作品との類似性と依拠性があれば侵害になり得ます。
AIで書いた文章を自分の言葉で書き直す・構成を考える・情報を足すといった作業は、著作物性の面だけでなく記事の質の面でも大切です。進め方はAIで記事・ブログを書く方法で解説しています。
商用利用・仕事で使う前のチェックリスト
文化庁の「チェックリスト&ガイダンス」で、AI利用者(業務での利用者・一般の利用者)向けに示されているリスクを減らす方法を、実際の作業の順に並べ直しました。
使い始める前
- 使うAIサービスの利用規約を確認する:他人の著作物の入力を禁止・制限している場合があります。商用利用の可否や生成物の権利の扱いもサービスごとに異なります
- 学習データについての情報を確認する:開発者・提供者が公開している学習済みモデルの情報(どんなデータで学習したか等)は、侵害リスクの程度に関わります
- 会社で使うなら社内ルールと研修を用意する:チェックリストは、生成AIの利用に関する内部ルールの策定や、従業員への著作権教育を勧めています。「侵害になるか」と「著作物になるか」を混同しないことも注意点として挙げられています
生成するとき
- 既存の作品に似せる目的の生成をしない:特に作品のタイトルやキャラクター名、作家名を指定するプロンプトは避ける
- 他人の画像や文章を入力するときは目的に注意する:入力そのものは原則として第30条の4の対象と考えられますが、「入力した作品と似たものを作らせる」目的なら適用されない場合があり、その場合は許諾が必要です
- 使ったプロンプトを記録しておく:依拠性がないことや、自分の創作的寄与を説明するための材料になります
公開・販売する前
- 既存の作品と似ていないかを確認する:チェックリストは、インターネットの文章検索・画像検索の活用などを例に挙げています
- 取引先にはAIを使ったことを説明できるようにする:AI生成物をライセンス契約などの対象にする場合、AIを使ったことや著作物性、似た作品の確認をしたことを適切に説明することが求められるとされています
- 万一のときの対応を決めておく:侵害の指摘を受けたときの公開停止・権利者への対応などを、あらかじめ想定しておくことが勧められています
出品サービスごとのAI生成物のルールは別に決まっていることがあります。たとえばココナラのルールはココナラでAIイラスト・AIサービスは禁止?出品ルール、画像生成AIの始め方はAI画像生成の始め方、AIで文章を書く副業の注意点はAIライティング副業の始め方で整理しています。AIで作ったものを販売して副業の収入が出たときの税金の申告は、姉妹サイト金融研究所の副業20万円以下は確定申告不要?住民税の申告と6つの誤解が参考になります。


よくある質問
AIで作った画像や文章は、そのまま商用利用してもいい?
著作権法上は、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方がなければ侵害にはなりません。ただし生成は私的使用などで適法でも、公開・販売といった「利用」は別に判断されます。使う前に既存の作品と似ていないかを検索などで確かめ、使っているAIサービスの利用規約(商用利用の可否など)も確認してください。
AIで作ったものに自分の著作権はある?
文化庁の考え方では、簡単な指示で生成ボタンを押しただけのものは著作物に当たらないとされています。一方、人が創作意図を持ち、創作的表現を具体的に示す指示や、生成物を見ながらの修正・加筆などの「創作的寄与」をしていれば、著作物と認められる場合があります。人が創作的に加筆・修正した部分は、通常その部分に著作物性が認められるとされています。
プロンプトに作品名やキャラクター名を入れるのは問題?
文化庁のチェックリストでは、既存の著作物そのものや、作品のタイトル・キャラクター名などの固有名詞をプロンプトに入力した場合、利用者がその作品を認識していたことを推認させる事情となり、依拠性が認められやすくなるとされています。似たものを作る意図での入力は避け、使ったプロンプトを記録しておくことが勧められています。
まとめ|「学習」「生成と利用」「著作物性」を分けて考える
生成AIと著作権は、①開発・学習段階、②生成・利用段階、③AI生成物の著作物性を分けると整理しやすくなります。AIを使う側にとって大事なのは、公開・販売するときは人が作った場合と同じく「類似性」と「依拠性」で判断されること、そしてボタンを押しただけのものは自分の著作物とは認められにくいことです。
使う前は、似せる目的の生成をしない・プロンプトを記録する・似た作品がないか確認する・利用規約を読むの4つを習慣にしましょう。文化庁は今後も判例やAI技術の動向を踏まえて「考え方」の見直しを検討するとしているため、文化庁の「AIと著作権について」のページで最新の資料を確認することをおすすめします。プロンプトの書き方の基本はプロンプトの書き方・コツ、ChatGPTの始め方はChatGPTの使い方 初心者ガイドをご覧ください。
※本記事は、文化庁が公表した資料の内容を要約・整理した一般的な情報です(基準日:2026年11月時点)。「AIと著作権に関する考え方について」は法的な拘束力を持つものではなく、個別の事案の判断は裁判所が行います。具体的な案件については弁護士などの専門家にご相談ください。各AIサービスの利用規約は変わることがあるため、ご利用前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。
出典・参考資料
- 文化庁「AIと著作権について」(関連資料の一覧ページ)
- 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)
- 文化庁著作権課「AIと著作権に関する考え方について【概要】」(令和6年4月)
- 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)
- e-Gov法令検索「著作権法」(第2条・第30条・第30条の3・第30条の4・第47条の5)



