生成AIの情報漏洩対策【2026】入力した情報はどこへ行く?入力してはいけない情報・ChatGPT/Claude/Geminiの学習オフ設定・会社で使うときの社内ルール
ChatGPTやClaude、Geminiに、仕事のメールや会議のメモ、顧客の情報を貼り付けて「まとめて」と頼む。とても便利ですが、入力した情報がそのあとどこへ行くのかを知らないまま使うと、思わぬ形で外に出るおそれがあります。この記事では、個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」と、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」、各社の公式ヘルプをもとに、情報漏洩が起きる経路、入力してはいけない情報、学習に使わせない設定、会社で使うときのルールを順に整理します。
- 生成AIに入れた情報は、①履歴として保存 ②モデルの学習 ③人によるレビュー ④共有リンク・連携先の4つの経路で、自分の手を離れることがある
- いちばん確実な対策は「外に出ると困る情報は入力しない」こと。個人情報・パスワード・未公開の社内情報・取引先から預かった情報は、消すか言い換えてから使う
- ChatGPT・Claude・Geminiには学習に使わせない設定がある。ただし学習オフでも一定期間は保存される(Geminiは72時間、Claudeは30日など)
- 会社で使うなら、使ってよいサービス・入れてはいけない情報・設定・困ったときの報告先を社内ルールで決める。国のガイドラインも「個人情報・機密情報を不適切に入力しない」ことをAI利用者に求めている
生成AIで情報漏洩が起きる4つの経路
「AIに入力したら情報が漏れる」と聞くと、AIがどこかに言いふらすようなイメージを持つかもしれません。実際には、入力した情報が自分の手を離れる経路がいくつかある、と考えるほうが正確です。各社の公式情報と公的機関の注意喚起から読み取れる経路は、次の4つです。
| 経路 | 何が起きるか | 根拠になる公式情報 |
|---|---|---|
| ① 履歴に保存 | 会話はサービス側のサーバーに一定期間保存される。学習をオフにしても、すぐには消えない | Geminiは「アクティビティを保存」がオフでも72時間保持。Claudeは学習を許可しない場合30日(いずれも公式情報) |
| ② モデルの学習 | 入力が機械学習に使われ、ほかの情報と結びついた形で、正確または不正確な内容で出力されるリスクがある | 個人情報保護委員会の注意喚起(一般の利用者向け①) |
| ③ 人のレビュー | サービスの改善や安全確保のために、提供会社側の人が会話を見る場合がある | Geminiの公式ヘルプ(オフでも人間のレビュアーによるレビューを含めて使用) |
| ④ 共有・連携先 | 会話の共有リンクを作ると、リンクを知る人が見られる。AIエージェントがメールや外部サービスとつながると、情報の行き先が増える | AI事業者ガイドライン(AIの脆弱性は完全には排除できないと認識する) |
生成AIが入力をどう処理して回答を作っているかは、生成AIの仕組みで図を使って解説しています。仕組みを知ると、「学習」と「その場の回答」が別のものだとわかり、設定の意味も理解しやすくなります。


国はどう注意している?個人情報保護委員会とAI事業者ガイドライン
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの普及を受けて、事業者向け・行政機関等向け・一般の利用者向けに分けて注意点を公表しています。要点は次のとおりです。
| 対象 | 主な注意点(要約) |
|---|---|
| 個人情報取扱事業者(会社など) | 個人情報を含むプロンプトを入力するときは、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認する。本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性がある。そのため、提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認する |
| 行政機関等 | 利用目的のための必要最小限の利用か確認し、提供事業者が保有個人情報を機械学習に利用しないこと等を十分に確認する |
| 一般の利用者 | 入力した個人情報が機械学習に使われ、他の情報と統計的に結びついたうえで、正確または不正確な内容で出力されるリスクがある。応答には不正確な内容の個人情報が含まれることもある。利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認して判断する |
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)
AI事業者ガイドラインは、AIを事業で使う人に向けた国の統一的な指針で、2024年4月に第1.0版が作られ、2026年3月31日に第1.2版が公表されています。ガイドライン自身が、法的な拘束力のない「非拘束的なソフトロー」だと位置づけています。
このガイドラインは、AIを使う事業者を「AI利用者」と呼び、重要な事項の中で次のように求めています(第5部より)。
- 個人情報の不適切入力の防止:AIシステム・サービスへ個人情報を不適切に入力することがないよう注意を払う
- セキュリティ対策:AI提供者によるセキュリティ上の留意点を守り、機密情報等を不適切に入力することがないよう注意を払う
- 規約の遵守:AI提供者が定めたサービス規約を守り、提供された文書を適切に保管・活用する
つまり、国の資料は共通して「何を入れるかは使う側の責任」「規約を読んで、学習に使われるかを確かめる」という立場です。
入力してはいけない情報と、安全な言い換え方
上の資料をふまえ、外に出ると困る情報を種類ごとに整理しました。「入れない」ものと、「消す・言い換えれば使える」ものを分けて考えると、AIの便利さを手放さずに済みます。
| 情報の種類 | 例 | どうするか |
|---|---|---|
| ログイン情報・鍵 | パスワード、APIキー、アクセストークン、暗証番号 | 入力しない(言い換えても意味がないため)。うっかり貼った場合はすぐに変更する |
| 個人情報 | 顧客・社員の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、病歴などの要配慮個人情報 | 「Aさん」「顧客1」などに置き換える。会社の仕事では社内ルールと利用目的の範囲を確認する |
| 未公開の社内情報 | 発表前の新商品、決算前の数字、人事、M&A、未公開の企画書 | 固有名詞・金額を消すか、架空の値に変える。法人向けプランなど会社が認めたサービスだけで扱う |
| 取引先から預かった情報 | 顧客の資料、契約書、秘密保持契約(NDA)の対象になっている情報 | 契約で第三者への提供が制限されていないかを先に確認する。迷ったら入力しない |
| 録音・画像に含まれる情報 | 会議の録音、名刺や書類の写真、画面のスクリーンショット | 写り込み・話し込みに注意。文字起こしの前に、話してよい内容か参加者に確認する |
言い換え(マスキング)の例
たとえば顧客へのお詫びメールをAIに整えてもらうなら、次のように固有の情報だけ消して頼めば、AIの手助けはそのまま受けられます。
- ×「山田太郎様(〇〇株式会社)、注文番号123456の配送遅れについてお詫びメールを書いて」
- ○「取引先の担当者あてに、注文した商品の配送が3日遅れたことへのお詫びメールを書いて。宛名と注文番号はあとで自分で入れます」
AIへの頼み方のコツはプロンプトの書き方・コツ、会議の録音から議事録を作るときの流れはAIで議事録を作る方法で解説しています。録音には参加者の発言や個人情報が多く含まれるので、この章の表とあわせて確認してください。


ChatGPT・Claude・Geminiの「学習に使わせない」設定
個人向けの主なサービスには、会話をモデルの改善(学習)に使うかどうかを選べる設定があります。基準日時点の各社の公式情報で確認できた内容は次のとおりです。設定の名前や場所は変わることがあるので、実際の画面と公式ヘルプで確認してください。
| サービス | 学習に使わせない方法 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| ChatGPT(個人向け) | 設定の「データコントロール」で、会話をモデルの改善に使う項目をオフにする。履歴に残さない「一時チャット」もある | オフにしても、それまでの会話の扱いや保存期間は公式ヘルプ「データコントロールに関するFAQ」で確認する |
| Claude(Free・Pro・Max) | プライバシー設定で、会話をClaudeの改善に使うかを選ぶ(いつでも変更できる) | 2025年8月28日の規約更新で選択制に。許可すると保存期間は5年、許可しなければ従来どおり30日。削除した会話は今後の学習に使わない。この変更はClaude Codeを含む個人プランが対象で、Claude for Work(Team・Enterprise)・API・教育機関向けなどは対象外 |
| Gemini(個人のGoogleアカウント) | 「アクティビティを保存」をオフにすると、今後のチャットはAIモデルの学習に使われない(フィードバックを送った場合を除く) | オフでもチャットは72時間アカウントに保持され、応答や安全確保のために使われる(人間のレビュアーによるレビューを含む)。仕事用・学校用アカウントでは別のデータ処理規約が適用される場合がある |
3つに共通するのは、「学習オフ=何も残らない」ではないことです。Geminiの公式ヘルプは、設定がオンの場合について「機密データやレビュアーに見られたくない内容」は入力しないよう求めています。設定は「学習に使われる」経路を減らすもので、入力しない対策の代わりにはなりません。
ChatGPT・Claude・Geminiそれぞれの特徴や得意なことはChatGPT・Claude・Geminiモデル比較、ChatGPTの基本の使い方はChatGPTの使い方 初心者ガイドで紹介しています。
会社で使うときの社内ルールの作り方
社員が個人のアカウントで思い思いにAIを使っていると、どこに何が入力されたかを会社が把握できません。個人情報保護委員会の注意喚起とAI事業者ガイドラインの考え方をもとに、社内ルールに最低限入れたい5項目をまとめました。
- 使ってよいサービスとプラン:個人向けの無料プランではなく、会社が契約した法人向けプランやAPIに限るか決める。個人情報を扱うなら、規約で「入力データを機械学習に利用しない」ことを確認する(個人情報保護委員会の事業者向け注意点)
- 入力してはいけない情報のリスト:上の表のように、種類と具体例で示す。「機密情報は禁止」だけでは、何が機密か人によって判断が分かれるため
- 設定のルール:学習オフ・共有リンクの扱いなど、会社として決めた設定を全員にそろえてもらう
- 出力の確認:AIの回答には不正確な内容が含まれることがあるため、社外に出す前に人が確認する(個人情報保護委員会の一般向け注意点②、ガイドラインの「AIの出力について精度及びリスクの程度を理解し」)
- うっかり入力したときの報告先:誰に・いつまでに報告するかを決め、責めない雰囲気を作る。隠されるのがいちばん危ないため
AIで作った文章や画像を社外に出すときは、情報漏洩だけでなく著作権の確認も必要です。文化庁の考え方は生成AIの著作権で整理しています。生成AIの導入やセキュリティ対策を仕事として支える会社がどの業界にいるかは、姉妹サイト転職業界研究所のIT業界地図2026|年収・売上・未経験からの入り方が参考になります。
AIエージェント・ツール連携で増えるリスク
最近は、AIがメール・カレンダー・社内の共有フォルダ・外部サービスとつながり、自分で作業を進めるAIエージェントが広がっています。便利な反面、AIが読める情報と、AIが情報を送れる先がどちらも増えるため、チャットだけで使うときより気をつけることが増えます。
- つなぐ範囲を最小限に:その作業に必要なフォルダ・アカウントだけをつなぐ。全部の権限をまとめて渡さない
- 外から来た文章に隠れた指示:AIが読むWebページやメールの中に、AIをだます指示が仕込まれる攻撃(プロンプトインジェクション)がある。AI事業者ガイドラインも、推論用のデータに細かな情報を混ぜることで意図しない判断が行われる可能性をふまえ、AIの脆弱性を完全に排除することはできないと認識するよう求めている
- 送信・削除の前に人が承認:メール送信やファイルの共有・削除など、取り消しにくい操作はAIに任せきりにせず、人が確認してから実行する設定にする
AIエージェントが外部ツールをどう使っているかはClaude Code・Codexの仕組み、プロンプトインジェクションを含む攻撃の手口はサイバー攻撃の仕組みと対策、会社でAIエージェントを動かす前に決めておきたい権限や承認の設計はAIエージェント本番運用の安全設計で詳しく解説しています。


今日からできる対策チェックリスト
個人で使うとき
- パスワード・APIキー・暗証番号は入力しない
- 名前・住所・電話番号などは「Aさん」「〇〇市」などに置き換えてから入力する
- 使っているサービスの学習に使う設定を確認し、必要ならオフにする
- 会話の共有リンクを作ったら、不要になったときに削除する
- 利用規約とプライバシーポリシーの「入力データの扱い」の部分を一度は読む
仕事で使うとき(上に加えて)
- 会社のAI利用ルールと、使ってよいサービスを確認する(無ければ上司・情報システム担当に確認)
- 取引先から預かった資料は、契約で第三者への提供が制限されていないか確かめてから使う
- AIの回答は、社外に出す前に人が確認する
- うっかり入力したら、すぐに報告する
よくある質問
学習オフの設定にすれば、何を入力しても安全?
安全とはいえません。学習オフにしても、会話は一定期間サービス側に保存されます。たとえばGeminiの公式ヘルプでは、「アクティビティを保存」がオフでもチャットは72時間アカウントに保持され、安全確保のために人間のレビュアーが見る場合があるとされています。パスワードや顧客の個人情報など、外に出ると困る情報はそもそも入力しないのが基本です。
会社の仕事でChatGPTなどを使ってもいい?
まず会社のルールを確認してください。個人情報保護委員会は、事業者が個人データを含むプロンプトを入力する場合、そのサービスが個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう注意喚起しています。会社で使うなら、使ってよいサービス・入力してはいけない情報・設定を社内ルールで決め、個人向けではなく法人向けのプランやAPIを選ぶことも検討します。
入力してしまった情報は消せる?
会話の削除はできますが、すでにサービス側に保存された分やほかへ共有した分がどう扱われるかはサービスごとに違います。Anthropicは、Claudeで削除した会話は今後のモデル学習に使わないと説明しています。会社の情報を入力してしまった場合は、自己判断で済ませず、社内の情報セキュリティ担当に報告してください。
まとめ|「入れない」が先、「設定」はその次
生成AIに入力した情報は、保存・学習・人のレビュー・共有や連携という経路で自分の手を離れることがあります。学習オフの設定は大切ですが、防げるのは「学習」の経路だけで、保存やレビューは残ります。だからこそ、パスワード・個人情報・未公開情報・預かった情報は入れない、または言い換えてから使うことが、いちばん確実な対策です。
会社で使うなら、使ってよいサービス・入れてはいけない情報・設定・出力の確認・報告先の5つを社内ルールにしておきましょう。個人情報保護委員会の注意喚起やAI事業者ガイドラインは、今後も状況に合わせて更新される可能性があるため、公式サイトで最新の資料を確認することをおすすめします。生成AIそのものの基本は生成AIとは?から読むとつながりがわかりやすくなります。
※本記事は、個人情報保護委員会・総務省・経済産業省の公表資料と、各AIサービスの公式情報を要約・整理した一般的な情報です(基準日:2026年11月時点)。各サービスの設定名・保存期間・規約は変更されることがあるため、ご利用前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。個別の契約や法的な判断については、弁護士などの専門家にご相談ください。



